学ぶことの心理的な意味ー良いものを取り入れること、取り入れることが良い体験となることー

今回は「学ぶこと」についてのお話です。

 

学びというのは、自分の中に良いものを「取り入れる」という心理的作業を伴うものです。「学ぶこと」にとって、それが良い体験として感じられるということが大切なことです。これからそのことを説明していきます。

 

「学ぶこと」は、心理学の世界ではよく食べ物の摂取で喩えられます。自分にとって必要な栄養を食べ物として口から取り入れ、それを歯で噛み砕き(咀嚼し)、それらは食道を通り胃で消化されやすい形に分解され、腸で消化されて栄養として吸収され、最後に残ったものが肛門から排泄されます。

 

これは「学ぶこと」も同じです。自分にとって必要な知識や経験を自分の中に取り入れ、それを時間をかけて咀嚼し、吸収(理解)していくことでしっかりと身に付けていくことができます。本当に自分の身になる学びにはこの咀嚼するという過程が大切です。丸呑みではまるでテスト前の徹夜の暗記のようなもので、ちゃんと消化吸収はされずに消化不良のまま排泄されてしまいます。あるいは、何が自分にとって必要で何が必要でないか分からず、知識を溜め込むだけの勉強では、必要ないことまでしっかりと憶えようとして、必要ないものを排泄できずに、本当に必要な栄養を取り入れられなくなってしまうといったことにもなるかもしれません。

 

例えば、赤ちゃんは最初、母親の授乳(母乳であってもミルクであっても)によって栄養を吸収していきます。これは良いものを与えてもらえる体験であり、良いものを取り入れる体験となります。このような赤ちゃんは、自分の中に何かを取り入れるということへの安心感や喜びを感じて成長していきます。ですが、もしこの授乳体験が悪いものとなってしまうとしたらどうでしょうか?もちろん生きていくため、成長していくためには授乳が必要です。でも赤ちゃんが飲みたくない時やもういらない時に無理やり与えられ続けたり、あるいはもっと欲しいのに少ししか与えてもらえなかったりしたら、それは赤ちゃんにとっては悪い体験になります(繰り返しますが、生きていくためには必要です。しかし心理的な体験としては別です)。このような赤ちゃんは、自分の中に何かを取り入れるということは不快感を伴うものとして感じることになっていくでしょうし、場合によっては取り入れるというよりも押し込まれるといった体験となってしまう場合もあるかもしれません。

 

「学ぶこと」は、この赤ちゃんの授乳体験の話と同じことなのです。自分の中に何かを取り入れることが安心や喜びといった良い体験となる子どもたちは多くのことを学んでいきます。学ぶための好奇心を持つことができ、積極的に新たな知識や経験を取り入れていくことができます。逆に、何かを取り入れることが悪い体験として感じられてしまう子どもたちは、新しい知識や経験が与えられることやそれと向き合った時に、無理やり押し込まれたり、好奇心や積極性を持てずに受身的になってしまったり、消極的いは拒否的になってしまうことで学ぶことが苦手な子どになってしまうかもしれません。

 

「学ぶこと」を良いこととして体験できるように、まず子どもが何を求めているのか、何に興味関心を抱いているのかということに耳を傾け、親が一緒に考えてあげることが大切です。赤ちゃんにタイミングよく適切に授乳する母親のように。