こどもの心理検査で何を見るのか?ー数値や指標だけではないこどもの特徴を見ることー

今回は、こどもの心理検査が実際にどのようなものを見ているのか、どのようなことに気をつけているのかについてお話しようと思います。

 

心理検査は、大人の場合もこどもの場合も「何かを見られる」、「テストされる」といった不安や緊張を感じてしまうことが多いようです。したがって、こどもの心理検査では、大人の場合以上に、安心してこどもが心理検査を受けられる環境を整えることが大切です。

 

例えば、

 

幼いこどもの場合、最初にこどもと母親に挨拶した後、「今から一人でこの部屋に入ってもらって検査をするんだけど大丈夫?」とこども本人に確認します。こどもは母親から離れて一人で部屋に入り、検査を受けることになります。

そのままスムーズに入室する子もいれば、戸惑いながら母親の方を何度も確認する子もいます。戸惑う子には、「お母さんと離れるの心配?」と不安な気持ちに触れつつ、「お母さんにはここで待っていてもらうからね。もし途中で心配になったらドアを開ければお母さんがいるからね」と、母親の姿が見えない間も母親が部屋の外で待っているということを伝え、母親にも了解してもらいます。

 

心理検査について母親がこどもにどう声かけして説明しているか、あるいはしていないか、それに対するこどもの反応や態度によって母子関係の在り方を見ることができます。

母親からの説明をちゃんと聞いており、ここで何をするのか分かって納得して検査を受ける子もいれば、母親からの説明はされているにもかかわらず納得しておらず検査に対して拒否的な子、母親から説明されておらず何のために自分が連れてこられたのか分からずここで何をされるかも分からずに不安でいっぱいな子など、様々な場合があります。

 

このような背景を考慮しながら、入室後に検査者の方から、こどもに「今日ここで何をするか聞いてる?」と、心理検査を受けるに至った経緯を確認した上でその必要性を分かりやすい言葉で説明してから実施します。最初からあまり緊張せずに検査に取り組むことができる子、最初に少し雑談している間にすぐに緊張が解れる子、なかなか不安や緊張が解れない子、検査を進めるうちに慣れてくる子、検査を進めるうちに最初は良い子として取り組んでいたにもかかわらず徐々に落ち着かなくなり真面目に取り組めなくなってしまう子など、この場合も様々です。

 

ここで取り上げた例はほんの一部ですが、心理検査を行なう状況の中では、こどもの様々な特徴が見えてくるものなのです。

 

心理検査では、こどもの場合は特に、検査結果に示される数値や指標だけでなく、“今ここで”生じている母子の交流や検査者との交流の中で見えるものを大切にすることが必要です。そして、結果をまとめる際も上述したような心理検査という状況全体からこどもについて見立てをし、見通しを立てることが大切です。